ロルナの祈り

『ロルナの祈り』について

『この愛だけを、私は信じる。』ーーーーーー「ロゼッタ」「ある子供」で2度に渡ってカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを獲得している世界的な名匠、ジャン=ピエール、リュック・ダルデンヌ兄弟が初めて愛の物語を描いた、国籍売買をテーマにした愛の物語。それが『ロルナの祈り』です。どの作品にもエンディングに音楽を使わないダルデンヌ兄弟の世界。ヒロインはベルギーでの幸せな暮らしを夢見て国籍取得のために麻薬中毒の男と偽装結婚をします。打算的な始まりですが、彼と過ごすうちに本当の愛に目覚めたヒロインは葛藤します。愛の無限の可能性や深さが深い感動を呼ぶ…そんな姿を描くラブストーリー。『ロルナの祈り』のエンディングにはヴェートーヴェンのピアノ・ソナタがが流れ、心に染みる映画となっています。

解説

『ロルナの祈り』ヒロイン、ロルナにはコソヴォ共和国出身の新進女優アルタ・ドブロシ。クローディ役には「イゴールの約束」、「ある子供」のジェレミー・レニエ。ファビオ役に「ある子供」のファブリツィオ・ロンジョーネ。ソコルにアウバン・ウカイ。製作、監督、脚本は「息子のまなざし」、「ロゼッタ」、「ある子供」のジャン・ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟です。この兄弟の描く世界が単なるラブストーリーである筈がありません。国籍を得る為に国籍の売買にとどまらず、人の命をも引き換えにする現実に驚くと共に、ロルナを演じるアルタ・ドブロシ自身も隣国コソヴォ共和国出身ということで、この『ロルナの祈り』に対する思い入れも強いものがあったかんだろうと感じます。

ストーリー

アルバニア人のロルナ(アルタ・ドブロシ)は、ベルギー国籍を取得するためアルバニアからベルギーを訪れる。そこで彼女はタクシー運転手でブローカーのファビオの手引きにより、麻薬中毒者のベルギー人クローディ(ジェレミー・レニエ)と偽装結婚する。ロルナはクローディを犠牲にしてでもパスポートを手に入れようとし、クローディは偽装結婚と知りながらもロルナを慕い、彼女を希望の光に麻薬を断とうとする。ロルナは当初クローディを拒み続けるが、次第に彼を受け入れるようになる。そんな中、ブローカーのファビオはロルナを利用し、彼女が国籍を得た後は彼女を未亡人にし、国籍を欲しがるロシア人と結婚させて国籍売買で儲けようとしていた。ロルナは故郷に恋人ソコルがおり、クローディと別れたいと思うが、ロルナを頼る哀れなクローディの姿に、彼女の気持ちはぐらつき始める…。

感想

『ロルナの祈り』は、ダルデンヌ兄弟が描く初めてのラブストーリーです。ロルナは終始暗い表情を見せています。一瞬笑顔を見せるのが、バイクで走るクローディを追いかけるシーン。このロルナの笑顔は、暗いテーマの『ロルナの祈り』の中でただ一度だけ、希望が見える素敵なシーン。弱々しくて、打ちひしがれた人間役が似合うジェレミー・レニエ。彼は元々痩せていますが、麻薬中毒者役のために激痩せした姿に役者魂を感じます。

スタッフ

キャスト

『ロルナの祈り』のキャストについてまとめました。みな、素晴らしい演技を魅せてくれました。

ロルナ役~アルタ・ドブロシ~
ロルナ役を演じたのはアルタ・ドブロ。2007年、オーディションで『ロルナの祈り』の主役を射止めました。1979年コンソヴォ共和国、プリシュティーナ生まれ。官能性を秘めた美しさに加え、撮影前にベルギーのリエージェに滞在し、わずか2ヶ月でフランス語をマスターとしたという知性で監督たちを魅了しました。内戦前の一発触発の雰囲気中をコソヴォで育ち、内戦中はマケドニアの難民キャンプで過ごしていたという異色の経歴を持ちます。プリスティーナ舞台芸術アカデミーに4年間在籍し、プリスティーナ及びサラヴェオで舞台経験を積みます。2004年、10数本の短編映画と数本の長編映画に出演し、コソヴォの大虐殺を追ったドキュメンタリーで歌も担当します。2007年にマケドニアのシネデイズ・ヨーロッパ映画祭で『MAGIS EYE』による優秀女優賞と特別賞を受賞しました。
クローディ役~ジェレミー・レニエ~
クローディ役を演じたジェレミー・レニエは、1981年ベルギー、ブリュッセル生まれ。ジュレミーの名が知れ渡ったのは、1996年のダルデンヌ作品「イゴールの約束」で、主役の少年イゴールをわずか14歳で演じたことでした。そんなジェレミー・レニエの俳優デビューは、10歳でベルギー・ブルクセンブルク合作のオムニバス「七つの大罪」です。その翌年、ベルギー・スイス合作のテレビ映画「英雄たちのメロディ」に出演。舞台では、モンス王立劇場で「ピノキオ」役を演じました。その後、「クリミナル・ラヴァース」(フランソワ・オゾン監督)、「ジェヴォーダンの獣」(クリストフ・オゾン監督)と、話題作への出演が続き、2003年、「ワークハードプレイ」(ジャン・マルク・ムトウ監督)ではセザール賞有望新人男優賞にノミネートされました。2005年には「ある子供」で主役のブリュノで好演し、オリヴェエ・アサイヤス監督の映画にも出演しています。また、最近では『ロルナの祈り』では麻薬から必死に立ち直ろうとするクローディを、過酷な役作りに挑んで人間味豊かに演じきりました。他にも「つぐない」(ジョー・ライト監督)、「The Vintnerza Luck」(ニキ・カーロ監督)などにも出演しています。
ファビオ役~ファブリツィオ・ロンジョーネ~
ファビオ役のファブリツィオ・ロンジョーネは、1973年、ベルギーブリュッセル生まれ。『ロルナの祈り』では、悪役のブローカーを、時にユーモアさえ感じさせる絶妙の演技で観客を魅了しました。1995年、パルのクール・フランの自由クラスに参加し、翌年ブリュッセルにある王立コンセルヴェトワールに入学します。王立コンセルヴェトワール在学中より舞台俳優としての活動をはじめ、タデウス・リセヴィッチの芝居「罠」でフランツ・カフカ役、スタンダールの「赤と黒」のジュリアン役を演じ、「ロゼッタ」ではロゼッタを優しく見守る友人・リケを演じたり、「ある子供」では若いチンピラ役で出演したりと、様々な役で俳優としての幅を広げました。また、俳優以外の活動も熱心で、「Les Fleaux(災い)」では俳優の他に、共同脚本、共同監督を務めました。
ソコル役~アウバン・ウカイ~
ソコル役を演じたのはアウバン・ウカイです。2005年の「MAGIC EYE」(クイティム・チュシャク監督)では、アルダと共演しました。1980年コソヴォ共和国、プリティーナ生まれ。4年間サラエヴォ舞台芸術アカデミーに在籍し、音楽(クラリネット、パーカッション、バイオリン)を学びます。多くの短編映画や、「アワーミュージック」(ジャン=リュック・ゴダール監督)に出演したほか、テレビドラマで活躍しています。
スピルー役~モルガン・マリンヌ~
『ロルナの祈り』でファビオの手下、スビルーを演じたモルガン・マリンヌは1985年ベルギー生まれ。8歳の時に初めて映画のオーディションを受けました。「Leveiode Ghislain Lambert」(1999年)にエキストラ出演したあと、「息子のまなざし」(2001年)のオーディションを受け、主役のフランシス役に選ばれます。そこで少年犯罪の加害者という難役を見事に演じきり、注目を浴びます。その他、ドミニク・カブレラ監督のFolleembellie、オリヴェエ・ランジェ監督の「Pomlepoulain」でも好演。今後もダイラン・バーマン監督「9mm」と出演作画続き、確実にキャリアを積んでいます。
捜査官役~オリヴィエ・グルメ~
『ロルナの祈り』で捜査官役を好演したのは、オリヴィエ・グルメです。ダルデンヌ映画になくてはならない俳優でしょう。『ロルナの祈り』ではワンシーンだけの出演だが、相変わらず絶妙な演技に魅了されます。出演作「息子のまなざし」では2002年カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞します。「ある子供」では私服の刑事として、「イゴールの約束」では外国人労働者の売人をしているイゴールの父ロジェ役を演じ、「ロゼッタ」では、ロゼッタが唯一尊敬するワッフル店の社長役を好演しました。他にも(デンヌ作品以外)で作品に出演し、「天使の肌」(ヴァンサン・ベレーズ監督)、「斧」(コスタ・ガヴラス監督)「リード・マイ・リップス」(ジャック・オディアール監督)、「タイム・オブ・ザウルフ」(ミヒャエル・ハネケ監督)、など多くの映画に出演しています。1963年ベルギー生まれ。

オリヴィエ・グルメの主な出演作品